「ナンバー1評価を獲得」
2011年春、次世代機Hi-MotionIIのプロトタイプが完成。NABに出展すると同時にロンドンオリンピックでの採用に向けた活動を開始する。オリンピック委員会の放送に関する窓口はスペイン。営業サイドはオリンピック委員会に何とかアポを取りHi-MotionIIの採用を働きかける。だがオリンピック委員会の反応は「実績のない機材は採用しない」というものだった。そこで営業チームはアメリカ、ヨーロッパの放送局を行脚し、約3ヶ月間で北半球を一周。その間一度も帰国することなく、ヨーロッパのサッカー、アメリカンフットボールなどの中継でHi-MotionIIプロトタイプのデモキャンペーンを行い、中継での実績を積み重ねるとともに、ユーザーからの改善の声を収集していった。
「プロトタイプですから、それこそユーザーが使えば使っただけ改善要望がでてきます。それをまとめて横浜の私に電話、ファックス、メールなどで連絡してくる。そして、ファームウェアをアップデートして返送する。その繰り返しでした」と後藤。「毎朝出勤する度にメールを開くのがドキドキでした。『今日も来たか』という感じで」と当時を振り返る。
営業チームが収集した情報に後藤らが対応。ファームウェアの書き換えは数十回に及んだ。まさに時差の関係で後藤が寝ている間に営業チームが活動、逆に後藤らは営業部隊が寝ている間にそれに対応するという形だ。「現地のユーザーがびっくりしたらしいですよ。早い時には昨日指摘されたことを翌日には改善していましたから」。
ロンドンオリンピックでの採用へ向け、アメリカ、ヨーロッパでスポーツ中継の実績を作っていった。
海外にいる営業チームからの報告を受け、約3ヶ月間の間で、数十回のファームウェアをアップデートに対応した。
北半球行脚によって実績を積み、アップデートされたHi-MotionIIを携え再びオリンピック委員会を訪ねた。そこでは、機材選考の土俵に載せてもらえること、さらには2011年10月に評価テストを行うことが伝えられた。そして10月、評価テストの会場であるマドリッドの体育館に、選考対象となっている競合各社のハイスピードカメラが一堂に会した。会場ではハンドボールの試合を行い、その様子をHi-MotionIIを始め競合各社のハイスピードカメラが同一条件下で一斉に撮影。画質やワークフローなどあらゆる評価が行われた。
その結果、Hi-MotionIIは「画質、性能ともにナンバー1」という評価を獲得する。