シニア、女性層の動作解析から
導かれたスイング面角度65度という数字
── | 大熊さんが主に担当されている中級者向け製品は幅広い層をカバーする製品だけに、開発には上級者向けとは違った苦労があるのではないですか。 |
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大熊 | はい。当然、筋力があって、スイングスピードが速いトップアスリート向けとは違ったアプローチが必要になってきますね。私が開発に関わった製品のひとつに「NANORAY GlanZ(ナノレイグランツ)」というラケットがあります。この製品は中級者でもシニア、女性層を主なターゲットとしたものなのですが、実はこの製品の開発にはハイスピードカメラがかなり寄与しました。 中級レベルのシニアや女性層の大きな悩みは利き腕の反対側で打つ「バックハンドがうまくいかない」ということ。私たちは基礎研究として上級、中級、シニア、女性などさまざまな層のプレーをハイスピードカメラで撮影し、その軌道や動作分析を続けていました。そうやって撮影した動画を解析していくと上級者が手首を返すスナップの力でバックハンドを打っているのに対し、シニア、女性層は手首の返しを使わず、むしろ流れるようにフォロースルーをとるようにスイングをしていることが分かったのです。スイング軌道でいうと上級者がインパクトの瞬間に角度が変わるのに対し、シニアの方などはそのまま円弧を描くような形になっています。 |
弊社担当者と撮影技術の打ち合わせをする大熊氏
── | 上級者が強いスナップでバックハンドを打ち返しているのに対し、筋力の弱い方々はそれができないから自ずとスイングを大きく取ろうとする。けれど利き腕を反対に使うからなかなかうまくいかない、と。 |
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大熊 | ええ。フォアに比べてバックはスイングスピードが落ちてしまいますから、どうしても思い通りに飛ばすことができない。そこでこのNANORAY GlanZでは、シニアや女性のスイング軌道にあわせて「楽にしっかり飛ばせるラケット」をテーマに開発を進めました。 |
── | プレーヤーが道具を使いこなすだけでなく、道具が人間に寄り添うというか、面白いアプローチですね。 |
大熊 | ええ。私自身が学生時代、スポーツ科学を専攻していたこともあり、競技レベル・年齢・性別によって、身体特性や動作特性が異なることを授業や研究活動を通して学びました。なので、人がラケットに合わせるのではなく、ラケットが人の動きに合わせる・サポートする、そんな開発をしたいという思いがあるんです。 |