航空管制官への憧れ、きっかけはアラン・ドロン|ユーザーズボイス08

「良い作品を作りたい」
その基本だけは変わらない

株式会社フジテレビジョン
技術局 制作技術センター 制作技術統括部
カメラマン

星谷 健司 

インタビュアー: ナックイメージテクノロジー 川瀬 健太
※ 記事内容は公開当時の情報です。 

| USER'S VOICE | USER'S VOICE 08 株式会社フジテレビジョン

プロフィール

1963年生まれ。岐阜県下呂市出身。電気通信大学卒業後フジテレビ入社。野球、競馬、F1など数々のスポーツ中継に携わった後、『翼をください!』、『Dr.コトー診療所』、『プライド』など数々のヒットドラマの撮影を担当。

User’s Voice第8回目。今回登場いただくのはフジテレビ技術局制作技術センターの星谷健司さん。カメラマンとして『ランチの女王』、『薔薇のない花屋』、『貴族探偵』など同局を代表する月9ドラマをはじめとした、数々のヒット作品の撮影に携わってきたベテランカメラマンです。星谷さんがなぜカメラマンの道を選んだのか、何を思い撮影にのぞんでいるのか、気鋭のカメラマンの矜持に迫りました。

航空管制官への憧れ、
きっかけはアラン・ドロン

──

今回のユーザーズボイスはフジテレビの技術局制作技術センターの星谷健司さんです。星谷さんというと<Dr.コトー診療所>などドラマのチーフカメラマンというイメージが強いのですが。

星谷

よくそう言われるのですが実はカメラマンとして入社以来、スポーツ中継や音楽番組などにも多く関わっています。

──

このコーナーは根掘り葉掘り聞くというのが特長ですので(笑)、今日はそんな星谷さんのこれまでのカメラマン人生をはじめ、今のテレビ界への想いなどさまざまことをお聞きできればと思います。

星谷

録音止めてくれたらいくらでもしゃべれるんですが(笑)。

──

いやそのギリギリの線までぜひお願いします。まず幼少時代のお話からお聞きしますが、出身は岐阜県ですよね。

星谷

はい。岐阜県の本当に山奥。今は市町村合併で下呂市になっていますが、僕が生まれた当時の住所は益田郡金山町。飛騨川と馬瀬川が合流する地点で、古くは飛騨街道の宿場町として栄えたところです。周囲を山に囲まれた地域で、街に出ると「空が広いな」ってよく思っていました。山間部なので陽が沈むのが他所より早いんですよ。

──

そういう自然豊かなところでけっこうワイルドというか自然児的に育ったという感じですか?

星谷

いや、読書少年というほどではありませんが、どちらかというとおとなしい感じだったと自分では思います。中学時代の部活はバスケットボールをやっていましたけれどね。一つ下に弟がいて、彼は季節になると川で鮎釣りとかに興じていましたが、私はもっぱらその釣果を美味しくいただくのが役割でした(笑)。

──

今の仕事につながる、たとえばテレビや映画に夢中になった少年時代があったわけではないのですか?

星谷

もちろんテレビは見ていましたが、映画を観るにも映画館は自分の街にはなかったですし、岩崎宏美さんのファンで部屋にはポスターが貼ってあったりしましたけど、これはごく普通の少年の憧れ。将来テレビや映像の世界に入ろうとはこれっぽっちも思いませんでした。

──

なるほど、それくらい遠い世界だったんですね。

星谷

ええ。ただ僕が最初に見た芸能人はけっこうすごくて、なんと山口百恵さん。子供の頃、旧下呂町の会館で名古屋の地方局制作の音楽番組の公開収録があって、そこにゲストで来られていた。サインももらったんですけど、実家にまだあるかな。

──

高校に入ってもまだ将来は漠然とした感じでしたか。

星谷

そうですね。高校は美濃加茂市にあって、そこまで一時間に一本しかない国鉄高山線で一時間以上かけて通学していました。最初はバスケットボール部に入ったんですが、朝練に参加するにも朝5時半に家を出ても練習開始に間に合わない。部活から家に帰ってくると相当遅くなってしまいます。なので1年間くらいで退部してしまいました。その後は特に部活にも入ることはなく、いわゆる帰宅部。ある意味、そこからの高校生活は青春を謳歌することもなく過ごした暗黒の2年間かな(笑)。

──

電気通信大学へ進まれたのは?

星谷

ここでようやく少し映像の世界が絡んできます。高校時代に観た映画でアラン・ドロン主演の<エアポート’80>という作品があって、そこに登場した管制官役がものすごくカッコよかった。「そうか管制官っていう仕事があるのか」と思い、何となく「管制官なら通信系を学ばなくちゃいけないだろう」って単純に思ったわけです。今のようにインターネットなどがあれば、もっと詳しく調べたんでしょうけど、当時は職業につながる大学を調べるにも情報が受験関係の本など限られたものしかなくて、おまけに航空管制官なんて特殊な仕事の情報はなかなか簡単には分からなかった。

──

たしかにそうですね。管制官になるために何を勉強したらよいかなんで想像できないし、どこを当たればいいのかも思い浮かばないですよね。

星谷

しかもこの話にはオチがあって、実はこのインタビューを受けるにあたって、昔のことを「アラン・ドロンの映画に影響を受けたな」などと思い返していたんですが、どこで記憶が違っちゃったのか、ずっとアラン・ドロンが航空管制官役でそれに憧れたのだと思っていたのが、今回調べてみたらドロンはパイロット役で管制官は別の人。ついでにいうと映画のタイトルも「エアポート’77」だと思い込んでました(笑)。人間の記憶って時間が経つとこうも変わっちゃうのかと、正直びっくりしました。