半導体への夢を描く二人の青年|匠の技06

日英のパートナーシップで達成した
10億コマ/秒の世界を捉える技術
超高速度撮影の未来を拓く

※ 記事内容は公開当時の情報です。

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| 匠の技 | 匠の技06 ウルトラハイスピードカメラ

半導体への夢を描く二人の青年

1980年代に工学系を学ぶ大学生なら半導体産業に注目するのは当たり前。特に電子工学系に在籍する学生にとって半導体分野は花形産業。多くの理工系学生が「なんらかの形で半導体に関わる仕事をしたい」と自身の将来を夢見ていた。柳もそんな学生の一人だった。
 
「半導体そのものというよりも、私の場合はそれを応用した製品開発に興味がありました。なかでもテレビ、VTR、フィルムなど映像に関わる仕事をしたいという思いが強かった。ナックを選んだ一番の理由はそこにあります」

もちろん半導体産業の隆盛は日本に限ったことではない。アメリカはもとよりヨーロッパ先進国においても自国経済の柱として半導体を軸にした産業振興に力を注いでいた。イギリスもそう。1980年代、スコットランドの中部に位置するダンディ、インヴァークライド、エジンバラの3都市を結ぶ地域はアメリカのシリコンバレーになぞられ<シリコングレン>(グレンはケルト民族の言葉で渓谷=バレー)と呼ばれ、一時期はヨーロッパの製造業部門においてパソコンの3割、ワークステーションの8割のシェアを担うほどだった。
 
そんなイギリスで半導体産業への夢を抱いていたのが、現在、ウルトラハイスピードカメラの開発でナックとのパートナーシップを築くインビジブル・ビジョン(IVV)代表のマーク・リッチズだ。
 
「当時のイギリスではテレビなどで半導体産業が大きく取り上げられていました。もともと電気系が得意だった私がそうした情報に触れ、『いつか自分もICをつくってみたい』と思うのはごく自然なことだったのです」

日本とイギリス。ほぼ同時期に学生時代を迎え、同じように「ものづくり」への道を歩んだ二人。数年の時を経て彼らは国境を超え互いの技術を一つの製品へと注ぎ込むことになる。