「ナックのDNAを継ぐ」
棚には整備を待つムービーカメラが並び、ある者は作業デスクでカメラを組み上げ、またある者は専用の工具を使って1本数十万以上の高価なレンズを慎重に分解する。傍らではテストチャートを撮影した画が映るディスプレイを難しい顔で覗き込んでいる者も。
レンタル窓口として馴染みがある東京・赤坂のオフィス。その奥へと進むと、ナックが販売・レンタルする映像・放送機器のメンテナンスを担当し、機器を常に最高の状態に保つためのサービスエンジニアリング部隊<制作技術グループ>の作業スペースがある。
彼らの役割をごく簡単に表現してしまうと「修理」という言葉になる。だが彼らサービスエンジニアの仕事は、多くの人がその言葉から想像する「単なる部品交換、補修」とは次元が大きく異なる。
赤坂オフィス奥にある制作技術グループ。カメラ、レンズなど映像機器を熟知した“職人”たちの熟練の技によって、レンタル、販売機器が常に最高の状態に保たれている。
「最高の状態の機器を提供することで映画やテレビの現場を支えている。自分たちもその作品の一部に関わっていると思っています」
そう話すのは制作技術グループで主にレンズを担当。入社40年になるベテランエンジニアの名取勝だ。静かな口調の中にも滲み出てくる仕事への誇り。これは名取個人が持つものというより制作技術グループ全体、さらに言うならナックが持つDNAなのかもしれない。
1958年に映像機器を扱う小さなプロショップとしてスタート。ほどなく自ら改良したアナモフィックレンズを開発。さらに販売した商品のメンテナンスをメーカー任せにすることなく、自社で行う現在の制作技術グループの前身組織を立ち上げ、ナックは「技術による差別化」によって業界内での地位を築いてきた。名取の言う「自分たちもその作品の一部に関わっている」という自負。それはナック自身のレゾンデートル(raison d’etre=存在価値)でもあるからだ。