アンジェニューの歴史 1951-1959

1951年
最初の8mm、16mm映画用レンズ
1951年から、P.アンジェニューは8、16、35mmフォーマットの映画用レンズにレトロフォーカス設計を採用していた。16mm映画カメラ用アンジェニュー10mm f1.8(10R21)レンズは人気で、下図はCマウントタイプ。
この頃は、プロもアマチュアも16mmと8mm映画制作の全盛期であった。アンジェニューレンズは、世界中のあらゆるカメラに装備された。ベル&ハウェル、コダック(USA)、エルクサムErcsam、パテ・ウェボ、ボリュー(仏)、ボレックス(スイス)、カレナ(リヒテンシュタイン)など。
アンジェニューは、ベル&ハウェルに人気のB&H 70(16mmフィルモ)の回転3本ターレット用のレンズを供給、10mm広角、中間25mm、望遠75mmと、もちろん10mm f/0.95もあった。
その後、1951年から1988年までにアンジェニューは150万本を供給。1953年にはアンジェニュー製品の40%が米国に輸出された。
Filmo 70カメラ
最初の35mm映画用レンズ
18.5mm f/2.2(T2.5)のレトロフォーカスR2マスターレンズは、35mm専用に造られた最初のアンジェニュー製品。5群7枚構成で、アパチュアはf2.2~16。最短撮影距離は0.75m(29.5")。
下図は、人気のカメフレックス・エクレール CM3マウントの18.5mm f/2.2 レトロフォーカス・タイプR2レンズである。
ウィリー・クーラントASC,AFC、オーソン・ウェルズとアンジェニュー18.5mm広角プライムレンズについて語る

「1950年代には、僕は18.5mmアンジェニュー・レトロフォーカス広角マスターを買ったんだ。自分のArri-2Bに付けるのには苦労したよ。マットボックスと他のレンズを取らないと、僕の指が写ってしまうほど広角だったんだ。
オーソン監督作品の『不滅の物語(Histoire immortelle(TV映画1968))』撮影の初日、エクレールCM3に18.5mmを装着し、ジャンヌ・モローから彼女が火をともしたろうそくへと、手持ちで移動しながら撮影していたんだ。そこら中煙でね。これがオーソンが見た最初のラッシュだった。僕の撮影が気に入り18.5mmも気に入って、そのときから素晴らしい協力関係になったんだ。オーソンは自分のCM3カメラを持っていて、J.モローとローレンス・ハーベイの出演した『ザ・ディープ(The Deep(1970))』で使った、アンジェニュー18.5mmも買ったんだ。」
アンジェニュー8mmシネレンズ
ボリューTR8レフレックス・ダブル幅8mm カメラが数年後(1958)に出たが、この写真にはアンジェニューの挑戦がうまく現れている: 広角レンズを使用する時に、如何にしたら他のレンズが写らないようにするかである。ベル&ハウェルのフィルモのように、他のカメラは3本ターレットが付いている。普通の広角レンズは通常最も短く、望遠レンズが最も長い。アンジェニューのレトロフォーカス設計により、広角レンズの前玉が更に前へ出て、他のレンズが写らないようになっている。 下図は、6.5mm f/1.8、12.5mm f/1.8、35mm f/1.8レンズ付のボリューTR8(8mmフォーマット)カメラ。
1953年
16mm用10mm f/0.95レンズ
1953年、アンジェニューはf/1.0以上の明るさという、神話的目標を達成することに成功した。そのレンズは16mmフォーマットの10mm(下図はCVマウントモデル)で、最大有効口径f/0.95(T1.1)である。それまでのレンズよりも2倍の光量を集めることができる。これでパリのメトロやニューヨークの地下鉄を、既存の光だけで(撮影許可も取らずに)カラー撮影することができる。ベル&ハウェル - アンジェニューレーベルで大量に出荷された。
1956年
L1- 最初のアンジェニュー16mm用ズーム17-68mm f/2.2
アメリカン・シネマトグラファー誌1975年3月号の、ハーブ・A・ライトマンによるインタビューで、ベルナール・アンジェニューは語っている。「我が社で設計した最初のズームは17 - 68mm 4:1でした。ベル&ハウェルの16mmアマチュアカメラ用のズームレンズというコンセプトでした。」 このズームレンズの意図は、ベル&ハウェルの3本ターレットのマスターレンズ3本、ワイド、標準、望遠を置き換えることであった。
マスターレンズの代わりとなるには、セミ広角の焦点距離でf/2からマスターレンズの解像度を保ちながら4倍の拡大率が必要である。重量は同等かそれ以下でなければならず、価格も同様である。アンジェニューの17 - 68mm f/2.2ズームは、これらの条件を満たしていた。ズーム範囲を一貫してシャープなフォーカスを一定に保つ、信頼性のある補正機構を持った、最初のズームレンズであった。プロトタイプは1956年に完成、1957年に生産開始、1958年に出荷開始。1957年から70年代後半まで70,000本が製造された。
1956年、アンジェニューは補正機構開発に成功し、ズーミング中の精密フォーカス維持が可能となった。このイノベーションは更なる開発へとつながり、ズーム比の改善、35mmフォーマット撮影用ズームの導入にも繋がった。アンジェニュー・ズームレンズは映画史の中の主要な発明であり、劇場映画、ドキュメンタリー、テレビ、CM、ニュースや撮影技術のスタイル、ルック、経済性、物語手法に多大な影響を与えた。