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「チャタリング」のような高速現象は、電気的に測定を行うことで発生の有無を確認することができますが、それだけでは「何が原因で発生しているか」まで特定することは困難です。目にも留まらぬ早さの現象を「可視化」するハイスピードカメラで撮影すると、その瞬間に何が起きているかを把握することができます。さらに画像解析を行うことで得られたデータや測定データを組み合わせ、問題発生の原因特定が容易にでき、スムーズな製品の改良につながります。今回は長尾産業株式会社ご協力による振動衝撃試験時のチャタリング発生の可視化計測事例を紹介します。
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チャタリングとは
「チャタリング」とは、リレー接点などの機械式スイッチで発生する現象です。スイッチはONまたはOFFの状態になるとき、接点が1度で接続、もしくは1度で離れるのが理想的です。しかし、機械式スイッチは、接点で「バウンド」や「擦れ」のような微細な振動が発生し、ONとOFFを繰り返してしまうことがあります。その結果不安定な信号が発されてしまい、機器類に誤作動を引き起こす原因にもなります。
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チャタリングは、機器に振動や衝撃といった外力が加わることでも発生します。機器類の耐震性評価では観点の1つとして、加振試験時のチャタリング発生の有無を確認することがあります。チャタリング時の接点の状況は電気的な測定により確認することができますが、ハイスピードカメラを組み合わせることで、チャタリング発生の原因となっている接点の挙動を観察し、接点の改良などに繋げることができます。
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撮影
振動試験装置でラッチングリレーに振動衝撃を加え、チャタリング発生の様子をハイスピードカメラで撮影しました。また、データロガーを介して測定データを同時収録しました。
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撮影時の条件は以下のとおりです。
【撮影対象】
リレー(直流負荷開閉形ラッチングリレー)
【試験内容】
リレーの接点が外力(振動衝撃)により、チャタリングを起こす様子を計測
【使用カメラ】
マルチヘッドハイスピードカメラ MEMRECAM MX(M-Cam)
CH1:2,000fps(全体映像)
CH2:5,000fps(拡大映像)
【測定データ(50kHzでサンプリング)】
CH1:振動波形(制御)
CH2:接点信号(DC24V)
CH3:トリガ信号(DC0-5V)
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データのポイント
今回は、1.衝撃波形、2.接点信号、3.ハイスピードカメラで撮影した映像の3つを連動させて観察しています。衝撃が加わったタイミングで、接点はどのような動きをしているのか、またその時の電気的なON/OFF状況(チャタリング)がどうなっているのかを時系列で確認できます。そして、動画像運動解析ソフトウェア『MOVIAS Neo』を使用し、画像上の特徴点を自動的にトラッキングして、接点の変位を定量解析しました。
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振動試験での可視化のメリット
衝撃波形や接点信号といった電気的な測定データに加えて、ハイスピードカメラで実際に撮影した接点の動きの観察を行うことで、振動衝撃などの外力が加わった時に発生するチャタリング時の接点の動きや、機器全体の動きを把握することができ、チャタリング対策の検討がしやすくなります。また、ハイスピードカメラで撮影した映像から定量解析もできます。
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被写体の特徴点を自動的にトラッキングし、対象点の位置、変位、速度、加速度などを算出できます。センサーなどをつけず細かい時間分解能で挙動の解析が行えるため、定量的なデータに基づいたチャタリング対策を可能にします。
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長尾産業株式会社撮影にご協力いただいた長尾産業株式会社は、茨城県日立市大みか町にある工業技術専門商社です。電子計測器、試験機等の販売に加え、振動試験を中心とした技術作業業務、現地プラントでの計測業務を扱っており、振動試験のスペシャリストが工業製品・部品等の信頼性向上、安全性や快適環境の確保、そして耐震性の確認などのための振動試験や計測を行っています。今回の機械式スイッチに振動衝撃を加えチャタリングを発生させるテストは、長尾産業本社の加振試験室にある振動試験装置で行いました。試験時にナック製ハイスピードカメラを使った可視化サービスも取り扱っています。振動衝撃試験をしたい、振動衝撃試験の挙動可視化をしたいなど、ご要望がございましたらお気軽にご相談ください。
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