柔道の安全性に関する研究|ユーザー事例

     
  • 日本のスポーツ界において、スポーツ事故をいかに減らすかが課題になっています。さまざまな競技でスポーツ事故ゼロを目指して、事故が起こる原因やプロセスを研究しています。スポーツ事故が起こる原因を探るために、身体動作を計測して科学的に分析し、スポーツ事故を減らすアプローチをする研究者もいます。

    光学式モーションキャプチャーMAC3D Systemのユーザーである了徳寺大学の越田専太郎教授もその一人です。柔道におけるスポーツ事故の要因をバイオメカニクスの手法を用いて解明する研究を行っています。

  • <参考文献>
    Koshida S., Ishii, T, Matsuda, T., & Hashimoto, T. Kinematics of judo breakfall for osoto-gari: Considerations for head injury prevention. Journal of Sports Sciences 35, pp1059-1065, 2017a.
    Koshida S., Ishii, T, Matsuda, T., & Hashimoto, T. Biomechanics of judo backward breakfall for different throwing techniques in novice judokas. European Journal of Sports Science 17, pp417-424, 2017b.

  • 研究・計測の概要

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    「Judo Safetyに向けた効果的な受身動作習得方法の開発を目指して」

    (公財)全日本柔道連盟は、2003年から2014年の間に柔道時に重篤な頭部外傷の事例(死亡事故含む)が少なくとも41件生じていたことを報告しています。また、この事例の多くは、初心者(非熟練者)が大外刈で投げられた際に頭部が畳に衝突することで発生しています。生命に関わるこのような頭部外傷は必ず予防しなければなりません。専門家の多くは、初心者における受身動作の未熟な技能レベルが頭部外傷発生と関連していると考えています。

    了徳寺大学越田教授らは、これまでに大外刈に対する受身動作を熟練者と初心者の間で比較し、頭頚部の角運動量の最大値は初心者で有意に大きい可能性があることを示しました(Koshida et al, 2017a)。
    また、初心者は受身動作時の体幹屈曲角度が大きく、さらに熟練者よりもかなり早い段階で股関節屈曲運動を開始することも報告しています。つまり、初心者は大外刈の受身で「体をまるめる」傾向にあることが示唆されます。

    ところで大外刈は後方へ投げられる技です。投げられる方向が見えないため、受身動作が難しいことは想像に難くありません。ただし、柔道の投げ技にはその他にも後方への投げ技が存在します。したがって、投げる方向のみで、大外刈による高い頭部外傷の危険性を説明することはできません。そこで了徳寺大学越田教授らは、同じ後方へ投げる技「大内刈」と大外刈の受身動作のキネマティクスを比較しました(Koshida et al, 2017b)。

  • 計測の結果

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    その結果、大外刈と大内刈に対する受身動作は、同じ「後ろ方向」への受け身動作でもキネマティクスは大きく異なることが明らかになりました。この事実は、大外刈に対する受け身動作は他の後ろ方向への技とは異なった体の使い方が求められることを示唆しています。

    上記の研究結果を受けて、現在、了徳寺大学越田教授らの研究グループは新しい受け身動作練習ドリルの開発に向けて研究を進めています。新たに開発したドリルを柔道初心者に介入し、大外刈の受身動作学習に対する効果の検証に取り組んでいます。

  • システム構成

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    ・使用カメラ Raptor-E×12台 / Hawk & Ospray×8台

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